映画『犬王』がつまらないと言われる理由は?素顔や結末をネタバレ解説

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映画『犬王』がつまらないと言われる理由は?素顔や結末をネタバレ解説

湯浅政明監督によるアニメーション映画『犬王』は、室町時代に実在したとされる能役者を題材にした意欲的な作品です。しかし、一部の観客から「犬王つまらない」という声も上がっているとか。

この記事では、映画『犬王』の結末や登場人物の素顔について詳しく解説しながら、なぜ賛否が分かれる作品となったのかを考察していきます。

目次

映画『犬王』の基本情報とあらすじ

まず、物語の全体像を把握しておきましょう。

『犬王』は、平安時代末期から室町時代にかけて語り継がれた「平家物語」と、実在したとされる謎多き能役者「犬王」を組み合わせたフィクション作品です。主人公の犬王は幼い頃に呪いをかけられ、異形の姿になってしまいます。一方、琵琶法師の友魚は壇ノ浦の戦いで視力を失い、平家の亡霊たちの声を聞くようになりました。

この二人が出会い、従来の能や平家物語の語りとは全く異なる革新的なパフォーマンスを生み出していく過程が描かれています。現代的なロック調の音楽に合わせて踊る犬王の姿は、確かに印象的でした。

犬王の素顔の真実【ネタバレ】

多くの観客が気になるのが、主人公犬王の本当の素顔でしょう。

犬王の素顔は、幼少期にかけられた呪いによって大きく歪んでしまっています。顔の形状は通常の人間とは異なり、身体の一部も不自然に曲がった状態です。この異形の姿のため、犬王は長い間人々から忌み嫌われ、隠れるようにして生活せざるを得ませんでした。

犬王の素顔は映画『ジョーカー』の主人公を彷彿とさせるという意見もあります。単に醜いというだけでなく、長年の苦しみや孤独感が表情に刻まれているのです。しかし、物語が進むにつれて犬王は自分の呪いと向き合い、芸術を通じて真の姿を取り戻していく過程が丁寧に描かれています。

映画『犬王』の結末とラストシーン【ネタバレ】

物語の終盤について詳しく見ていきましょう。

クライマックスでは、犬王が自身にかけられた呪いを完全に解き放ち、本来の美しい姿を取り戻します。友魚との音楽的なパフォーマンスは多くの人々を魅了し、一時的に大きな成功を収めました。しかし、この栄光は長くは続きません。

時代の流れとともに犬王の名声は徐々に忘れ去られ、彼らの革新的な芸術も歴史の中に埋もれてしまいます。友魚もまた、犬王との絆から離れることになり、二人はそれぞれ別々の道を歩むことになりました。

映画のラストシーンでは、600年もの間亡霊として彷徨い続けていた友魚のもとに、霊体となった犬王が迎えに現れます。長い時を経て、ようやく二人は再び結ばれるのです。この結末は、芸術の無常さと同時に、真の友情や情熱は時を超えて存在し続けるというメッセージを込めているのでしょう。

『犬王』がつまらないと言われる理由

賛否が分かれる要因を具体的に分析してみます。

伝統と現代の融合に対する違和感

最も大きな批判の一つが、室町時代を舞台にした物語にロック音楽や現代的なダンスを取り入れたことです。琵琶や太鼓といった伝統楽器の演奏シーンで、明らかにエレキギターの音が響いているのは確かに不自然でした。

伝統芸能に馴染みのある観客にとって、この現代的な要素の混入は作品への没入感を阻害する要因となったようです。「時代設定と音楽のミスマッチが気になって集中できない」という声も多く聞かれます。

物語の構造が理解しづらい

『犬王』は史実とファンタジー要素を複雑に組み合わせた作品です。犬王にかけられた呪いの詳細や、友魚が亡霊の声を聞く理由などについて、明確な説明が不足していると感じる観客も少なくありません。

特に能や室町時代の歴史に詳しくない視聴者にとって、物語の背景や登場人物の動機を理解するのは困難だったでしょう。現実と虚構の境界線が曖昧で、「結局何が言いたいのかわからない」という感想につながっているのかもしれません。

音と映像の不一致

技術的な側面での問題も指摘されています。アヴちゃんの歌声は素晴らしいものの、犬王のキャラクターが実際に歌っているように見えない場面が多々ありました。

声はシャウトしているのに映像では飛び跳ねていたり、ロングトーンの部分で激しく動き回ったりと、歌声とアニメーションの動きが噛み合っていないのです。この結果、犬王が歌っているのではなく、BGMに合わせて踊っているだけに見えてしまう問題が生じています。

観客描写のリアリティ不足

劇中の観客の反応にも疑問の声が上がっています。犬王の舞台を見た人々が現代のロックフェスのように盛り上がるシーンがありますが、「一度きりの演目なのに観客がなぜ歌えるのか」という根本的な矛盾が存在します。

また、河原での初舞台で子供が犬王のダンスを真似するシーンも、「石だらけの足場で見様見真似でできるような動きではない」という指摘がありました。

一方で評価される点も

批判的な意見がある一方で、高く評価されている要素も見逃せません。

映像表現については、さすが湯浅政明監督と言える高いクオリティを誇ります。犬王のダンスシーンの動きの滑らかさや、海中から草薙剣を引き上げるシーンの美しさなど、アニメーションとしての完成度は非常に高いレベルにありました。

また、アヴちゃんの歌声も平家物語の語り口調とロック調を見事に融合させており、独特の世界観を作り出すことに成功しています。伝統芸能に新しい解釈を加える実験的な試みとして、一定の評価を得ているのも事実です。

まとめ

映画『犬王』がつまらないといわれる理由について、ネタバレを含みながら登場人物の素顔を解説しました。

伝統と現代を融合させる試み、史実とファンタジーを組み合わせる手法、そして能楽という日本の古典芸能を現代的な視点で再解釈する姿勢。これらすべてが、観客によって好みが大きく分かれる理由となっています。

「つまらない」と感じる人がいる一方で、「新しい芸術表現に出会えた」と絶賛する観客もいるのが現実です。重要なのは、この作品が提示した問いや表現について、それぞれが自分なりの答えを見つけることかもしれません。

犬王と友魚の物語は、時代を超えて愛される芸術とは何か、そして忘れ去られた才能への想いを私たちに問いかけています。賛否両論あるからこそ、多くの人に深い印象を残した作品と言えるのではないでしょうか。

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